ケアマネジャーはじめ介護・医療に携わる皆さまへ様々な最新
情報を深く分かりやすくお伝えする「シルバー産業新聞」です。

Care-new.jp

大中小 テキストサイズ変更RSS

シルバー産業新聞

小濱道博の攻略!2015年介護報酬改定
小濱道博の攻略!2015年介護報酬改定(介護職員処遇改善加算)2016年6月15日16時21分

1,2月に北海道にて1800万の不正が発覚で指導強化へ

 

 2016年2月12日のNHKニュースにて、北海道旭川市の介護事業所が1800万円の不正請求で3ヶ月の業務停止処分となった事を受け、厚労省は全国の自治体に介護職員処遇改善加算に関する指導強化の通知が出されたと報じました。これを受けて、今後の実地指導などにおいて、介護職員処遇改善加算に関する指導が厳しくなると考えられます。しっかりと事前準備を行う事が急務です。

6-1.JPG

2,加算の全額を介護職員に渡すことがルール

 

この加算の算定ルールはとてもシンプルです。1年間に算定した介護職員処遇改善加算の増額に1円でも多く上乗せして、全額を介護職員に支給することです。逆に言うと、1円でも支給が不足している場合は、加算の算定要件を満たさないことから全額が返還となります。また、資金繰りの悪化の場合は賃金水準の引き下げの届け出を行う事で認められますが、これは賃金水準の引き下げであって、介護職員処遇改善加算を介護職員に支給しなくても良いという意味ではありませんので、いかなる場合も介護職員への未払いがあった場合は、年間の加算全額の返還義務が生じます。すなわち、介護職員に支給するか、国に返還するかの二者択一しか無い事になります。

 

3,加算の支給対象者は介護職員である

 当然のことですが、介護職員処遇改善加算の支給対象者は介護職員です。言い換えると、介護職員の配置人数の計算で、常勤換算の時間計算に含まれている職員は支給対象。含まれていない場合は、支給対象ではありません。送迎の運転手、厨房担当、専従の看護職員や相談員、指導員などは支給対象ではありません。

 

4,賃金水準、賃金総額の計算の注意点

 

  比較対象年度〜すなわち加算Ⅱは平成20年、加算Ⅰは最初に加算を算定した年度の前年度〜と当年度と比較して全額が支給されたか否かを判断します。この場合、双方の年度で給与規程が整備されていた場合は、その金額が賃金水準になりますので比較は容易です。しかし、給与規程が整備されていなかった場合は、賃金総額で比較することになります。この場合の賃金総額の計算では、残業分の賃金や夜間の割増賃金などを含めることは出来ませんので注意が必要です。
 また、当年と比較年で職員がことなる場合、比較年に居て、現在は居ない職員の給与金額は比較年から差し引きます。現在に居て、比較年に居なかった職員は、比較年に居たと仮定して、当時の給与水準で推計した給与金額を比較年に加えて整合性を取ります。

 

5,支給方法、配分方法は経営者に一任の加算

 

 支給方法、配分方法は経営者に一任されています。毎月の給与に上乗せしても、年に数回の特別賞与で支給も、その双方を組み合わせても問題ありません。要は、一年間に受けた加算総額の全額が介護職員に支給されて居れば良いのです。また、すべての介護職員に均等に分配する事も求められていません。極端な言い方をすると、一人の介護職員に全額を支給して、あとの介護職員はゼロ支給でも良いのです。そのため、この加算は人事評価を組み合わせて支給する方法が勧められます。

 

6,2015年改定で加算Ⅰが創設

 

 平成27年4月より常勤職員1名当たり12000円の昇級を可能とする加算Ⅰが新設されました。従来あった加算はⅡとして継続されています。賃金総額の計算方法では、2014年度を基準とする簡便法と、最初に加算を算定した前年度(交付金から算定している場合は2011年度)を基準とする方法の二者択一が可能です。二者択一の場合、その選択した結果によって、有利不利が起こります。通常の場合では、2011年度基準の選択で2012年から2014年の間で事業所の努力で実施した昇給部分などを、加算Ⅰにおける賃金改善額に含めることが出来ますので有利です。

6-2.JPG

 例えば、3年間で3000円の昇給を実施したとします。この3000円と今回の12000円の加算分を相殺して、差額の9000円を支給すれば良いというのが2011年度基準を使うメリットです。加算の中で過去3年間の昇給分を今回の処遇改善額として見てくれるのです。

6-3.JPG

 

 また、賃金水準を引き下げる場合は届出が必要ですが、これは介護職員一人一人の給与を一切引き下げてはいけないという意味ではありません。例えば、A職員の給与を1万円引き下げて、B職員の給与を1万円アップすれば、賃金水準は変わりません。賃金水準が変わらなければ届出は不要です。

 支給対象者は職員の配置基準に於いて「介護職員として勤務実績のある職員」のみが支給対象です。加算として算定した金額に対して1円でも多く介護職員に支給するというルールさえ守れば、支給方法や配分方法は経営者サイドに一任されています。即ち、毎月の給与に特別手当として上乗せしても、年に数回の特別賞与での支給であっても、その双方を組み合わせての支給であっても選択は自由です。配分金額も極端な言い方をすると、5人の介護職員にうち、一人だけに全額を支給して、他の4人がゼロ支給で有っても問題は制度上ありません。

 

7,加算算定のメリット(職員のモチベーションアップ等)

 常勤職員1名当たり12000円の昇級を可能とする加算Ⅰは5年半振りに昇級などに活用できる加算となります。一人一人の給与アップが算定要件ではなく、総枠での賃金改善が要件ですので、非常勤職員の時給アップに活用が出来ます。

 例えば、2011年時点の一般の時給が1000円で、2015年の時給が1200円の場合、差額の200円が賃金改善額として集計されます。近年は介護職員等の雇用がなかなか進まず、結果として事業拡大が出来ないという弊害が生じています。この加算Ⅰを活用して、非算定事業所より時給金額を手厚くすることで、賃金の面で新規雇用が有利となります。

 

支給方法や配分方法は経営者サイドに一任されていますので、個人の能力査定などと連動させて、昇級や賞与の査定の上で金額に差を設けることで頑張る職員のモチベーションアップに繋げることが可能です。

 

いずれにしても、少なくても2018年3月までは国の制度として、訪問介護であれば請求総額の8.6%、通所介護であれば4%を上限として介護職員の賃金を一部負担して貰えることは、加算を算定する事業所と算定しない事業所の格差を広げることは間違いありません。すなわち、この加算Ⅰを算定しないことは、その時点で事業所の差別化と拡大のチャンスを失っていると言えます。

 

8,加算算定によるリスク対策

 

3年後の介護報酬改定で介護職員処遇改善加算が無くなった場合を考えると、それ以降の職員の給与を下げるわけにはいかず、かといって加算相当分を事業所側で負担するのは大変だから敢えて加算は算定しない。就業規則や賃金規程でキャリアパスを位置づけるのは会社にとって不利だから加算は算定しないなどの声を聞きます。

 果たしてそうでしょうか。仮に3年後に加算が無くなったとしても、自分の事業所だけでは無く、すべての事業所が同じ立場です。その3年間に加算をフルに活用して、経営基盤を盤石なものにすることでそのリスクも吸収できます。

 

 就業規則や賃金規程は労働法の専門家を活用することで決して不利なものにはなりません。逆に労働争議などに直面したときに会社を守ってくれます。専門家の費用も3年間の加算の総額に比べれば微々たる金額です。

 多くの加算を取らない理由は、取らないという結論のための後付の理由であって、正しい選択ではありません。加算を取る理由は、事業経営を安定させ、他の事業所との差別化を図るためです。

 

 介護職員だけを昇級しては、他の職種から不満が出るという意見も聞きますが、多少なりとも毎年の昇級を各職種共に実施している場合、介護職員の昇級分は加算で充当できますので、介護職員の昇級分を他の職種の昇級分に上乗せが出来ます。結果的に、他の職種の更なる昇級に繋がるのですから問題は少ないと考えます。

 今の時代、頑張れば時給が上がるのは、どの職業でも常識です。それは同時に、事業が伸びていることを前提とします。職員がいないから事業を伸ばせないという意見に対しては、職員と事業のどちらが先かは、鶏と卵の議論と同じとお答えします。目の前に加算があるのですから、第一に加算を活用して職員の問題を解決すべきです。利用者の拡大という結果は自ずと付いてきます。しかし、出来ない理由ばかりを考えて動かなければ何も変わりません。

 

9,最大のリスクはコンプライアンスリスク

 

 この加算の最大のリスクは、加算の算定要件を満たさないことでの報酬返還です。加算であることで算定時点に遡って加算の全額が返還対象になります。同様に、加算の収入部分を通常の資金繰りで使い込んでしまい、いざ賞与で支給しようとしたときに現金が手元に無いという事態です。現金が無いから払えないでは済みません。算定基準で未払いは認められません。加算の算定要件は既定事項として、ここでは解説していません。不明な部分があれば、専門家のブレーンや役所にこまめに確認することを怠ってはいけません。その部分に注意を頂ければ、経営上で真っ先に算定すべき加算です。是非、この加算を積極的に活用して事業を拡大して頂きたいと思います。

6-4.JPG

「小濱道博の攻略!2015年介護報酬改定」カテゴリーの最新記事

シルバー産業新聞購読のご案内

発展する「シニアマーケット」の動向など、確かな業界情報はシルバー産業新聞から。

1年間(12回)
7,700円(送料・税込)
2年間(24回)
14,214円(送料・税込)
3年間(36回)
19,545円(送料・税込)

購読、書籍のお申込みはコチラ

  • 【お知らせ】電子版「シルバー産業新聞」
  • シルバー産業新聞申し込み
  • ハンドブック申し込み
  • SSL グローバルサインのサイトシール