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介護保険と在宅介護のゆくえ
介護保険と在宅介護のゆくえ 連載142013年5月28日12時26分

訪問介護の報酬アップ、介護職の待遇改善なくして在宅介護は困難

1.在宅介護を困難にしている訪問介護の仕組み 


 介護保険がスタートして13年、介護サービスの受給者は3倍になった。公表されている2010年までの介護保険収支は黒字であり、5年で赤字に転落したドイツ介護保険と比較して経営はできている。
 

 介護保険の利用者の72%は在宅におり、介護報酬も在宅の方が安価で、しかも、施設整備費が不要だ。高齢者は持ち家率が高く、自宅は居場所であり、「何もしなくてもいい場所」である。そしてこれを支えているのは近隣と家族と訪問介護と通所介護、ショートステイ、福祉用具、訪問看護、訪問リハビリ、在宅療養を担う医療機関等なのである。
 

 この在宅介護を困難にしているのは、家族が介護することを前提の制度設計を変えない介護保険のひずみであると考える。特にヘルパーに厳しく、例えば同居家族がいれば買い物や、掃除、調理は認められず、ヘルパーは1回入ると2時間空けなければ次に入ることができない。
 

 20分未満の介護は保険が利かず、病院に行くためにタクシーを利用すると、乗車中の介助ヘルパーに保険が利かない。病院で診察券を出してからのヘルパーには保険が利かない等で、実態と乖離した報酬体系が在宅介護を困難にしている。
  

2.訪問介護の報酬減額が介護人材不足を招いた 


 介護保険スタート時点は「人に役立つ仕事をしたい」とヘルパー研修を受ける人もいた。しかし、ホームヘルパーは短時間で利用者と向き合い、時間に追われて介護しても、直接、介護時間しか報酬が払われないため低賃金で、仕事も不規則で多くの人たちが厳しさに直面した。
 

 それでも3年たてば報酬見直しがあると期待したものが、03年の報酬改定では反対に報酬が下がり、06年にはさらに厳しく報酬が下がって、介護の仕事にやりがいを見つけても、将来性を見いだせずに介護離れを招いた。この時期の介護職はむしろ介護支援専門員の試験を受け、ケアマネジャーになる方向転換が1つのキャリア形成とされていた。
 

3.挫折した介護職員基礎研修と介護職のキャリア形成 

 介護保険法改正にともない、06年から介護職のキャリア形成として「介護職員基礎研修500時間」が始まり、12年度にはヘルパー1級は介護職員基礎研修に一元化され、ヘルパー3級は介護保険から排除の方向が出され、国家資格の介護福祉士への道が示された。
 

 しかし、介護福祉士になってもヘルパーの仕事の評価や報酬がアップすることはなく、介護職員基礎研修は閑古鳥が鳴く状況で、「厚生労働省が笛を吹いても介護職は誰も踊らなかった」のだ。
 

 訪問介護事業所は要介護1が要支援2に変更になることで、収益も下がり、介護職員基礎研修は何のメリットもなく、介護職キャリア形成に飛びつく状況にはならなかった。これは介護保険の政策的な失敗だが、6年後の12年度には何の反省もなく廃止されている。また介護職には、新たにケアマネジャーへの道も閉ざされようとしている。
 

4.高齢者のニーズに合わない効率化に介護保険の将来はない  
 

 12年度から「地域包括ケア」が打ち出され、サービス付き高齢者向け住宅に介護サービスを併設し、効率的にサービス提供を行い、報酬を下げる方向が出された。メニューの一つとしては評価するが、高齢者は在宅が希望であり、持ち家率も高く、家賃負担を強いた効率化で追い込むのはいかがなものであろうか。また、複数のサービスを1つの事業所が提供し、介護度別の定額報酬にする方向も、選択肢の1つとしては評価するが、高齢者の負担と給付のバランスを考えると伸びるとは思えない。
 

 他方では軽度者の負担増やサービスの抑制をすることで、介護度が改善することはなく、悪化することで、かえって介護保険の負担が増すと考える。押し寄せる高齢化への対応ができるのは、在宅でより長く暮らし続けることができるようにすることであり、そのための在宅介護サービスの充実と地域のケア体制の構築が不可欠だ。
 

5.訪問介護にまともな報酬なくして、キャリアアップは空論 
 

 訪問介護と地域の資源の活用、それはサービスを活用した自立支援策であり、地域の資源には限度額がないので開発すれば無限大に広げることができる。
 

 ケアマネジメントを追い込むことや、介護職を追い込むことでは介護保険の将来は見えない。まともな報酬と最低限のサービスで最高の効果が上がる、在宅のケアマネジメントの構築が求められる。

日本ケアマネジメント学会 理事 
服部万里子 

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