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介護保険と在宅介護のゆくえ
介護保険と在宅介護のゆくえ 連載262014年5月21日08時10分

今、介護保険で人権が危ない

「その人らしく、過ごしてもらうケア」に不安

1.認知症91歳が轢死した遺族への720万円の損害賠償の控訴に再度320万円の控訴審判決

 名古屋地裁はJR東海の対応の不備を認め損害賠償額を減額しました。介護遺族への監督義務違反の賠償責任を問う判決が再度だされました。この判決は認知症が65歳以上の4人に1人とされてきた現在、介護家族や介護施設、介護職や成年後見人に多くの不安を与える判決です。

 控訴審判決の問題は3点あります。第1は「介護を怠った、監督義務違反」に関して、2回の親族会議が開かれ、親族が論議し取り組んできています。要介護1の認定が出た5年前から、神奈川の長男の嫁が介護のため近所に転居して介護を妻と共にしています。事件当日も通所介護に週6日通い、放尿には自宅内にゴミ箱を配置して対応するなど日常的に介護してきたことが明らかです。

 第2は当日も嫁が放尿の片付けをし、夫とおやつを食べていた85歳の妻(要介護1)のいねむりの数分間に徘徊がおきましたが、過去2回の徘徊以降、警察への届出をし、靴と下着に連絡先を記入し縫い付けるなど対応してきました。しかし、最近2年間、徘徊はなかったことから予測を超える事態であり、介護義務違反とはいえないと考えます。

 第3は、切符も持たず、金も払わず、駅構内に入り、ホームの端から線路に降りることを放置していたJRは人命尊重上の問題があります。夫を亡くして、自分を責め、悲嘆にくれる妻に介護義務違反を問うのは過酷ではないでしょうか。このような判決がまかり通るなら、認知症は縛り付けるのか?施設に入れるのか?施設でも、同様に「その人らしく、過ごしてもらうケア」への不安が出てきます。

2.神戸市の認知症へのドア鎖施錠に「高齢者虐待」で介護事業所とケアマネ事業所と訪問介護事業所に半年間の行停止処分は妥当か?

 同時期に神戸では、認知症90歳徘徊の男性、妻も要支援で、居宅介護支援事業所の管理者兼ケアマネジャーが、利用者宅の玄関をひもで括り、出られないようにしていました。そのひもを本人がはさみで切ったため、チェーンで外側から施錠しており、1日3回ヘルパーが入る際に開錠していました。この事例に対して神戸市が高齢者虐待と認定し処分しています。

 その理由は①本人、家族等の了解を得ていなかった②地域包括支援センターや市町村への連携が図られていなかった。この2点に管理責任を問うのは妥当と思いますが、半年の業務停止は非常に厳しいと思います。妻がいても、トイレも行くし、風呂にも入るため、24時間の徘徊見守りは困難です。訪問介護も同様です。そうならば徘徊する人はどう対応するのか?

 ベストの選択とは思えないとしても、一方では徘徊し、監督義務違反が問われ、他方では施錠に虐待認定されるのであれば、今、認知症と向きあっている家族はどうしたらよいのか? 介護職やケアマネジャーは現実に動いている事態にどう対応するのか厳しいものがあります。結果論の評価はできますが、「改善勧告」など指導的対応が神戸市にできなかったか残念に思います。

3.介護の貧困が、連鎖する・・・外国人研修制度の課題

 総務省によると、家族介護を理由に離職した人は2007年10月~2012年9月に43万9,300人で、40歳以上が9割です。また、働きながら家族の介護をしている人の介護休暇取得率が1.5%で4人に1人が、介護をきっかけに退職や転職しています。(労働政策研究・研修機構)離職者は介護保険法の改正以後に急増しています。

 また、この年代で離職した人は、介護が終了しても正規雇用に再就職できない実態も報道されています。(東京新聞2013年12月12日)

 国は介護職の不足に備えて、「外国人研修制度」を導入しようとしていますが、これはEPAに基づく介護職・看護職の受け入れ研修とは異なるものです。

 すでに農業や工業の分野で単純労働の担い手として導入され、低賃金や人権問題が多発しています。日本弁護士会も「外国人技能実勢度の廃止」を提言しています。介護職が不足する理由は介護職の低賃金や労働環境にあり、その根本は介護報酬の低さにあります。介護福祉士の20万人余が国家資格を生かしていません。若手がなりたい仕事に介護をしていくことが先決だと思います。

<シルバー産業新聞2014年5月10日号>

日本ケアマネジメント学会 理事

服部万里子

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