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介護保険と在宅介護のゆくえ
介護保険と在宅介護のゆくえ 連載352015年3月24日14時41分

介護報酬▲2.27%は実質▲4.48%で、介護保険は人材から崩壊する

1.5回目の改定は大幅減額改定

 今回の見直しで、介護報酬はマイナス2.27%と言いながら、処遇改善加算分の1.65%は右から左で経営には関係しない。処遇改善で1万2,000円アップと打ち出しているが、基本給をそのままアップすることで人材確保や安定に繋がることにはならず、非常勤の時給アップや研修費用、残業代なども含めた処遇改善にならざるを得ない。これで、介護職の平均給与が全産業平均より月額10万円安い現状の改善には程遠い。介護報酬を上げることが必須である(表)。

0203hattori.jpg また、介護サービスの充実によるプラス0.65%は退院してくる重度者や認知症、医療ニーズへの対応の加算であり、その分の介護内容の重度化や医療行為の責任などの介護職の負担や研修費用の経営負担に見合う内容にはなっていない。居宅介護サービス利用者の73%は要支援~要介護2であり、この人たちへのサービス報酬は下げられるのである。

 特に訪問介護の3割、通所介護の2割は要支援であり、その15年度報酬単価は大きく下がり、地域支援事業への誘導が行われるであろう。

2.2025年を待たずに介護保険は人材不足で継続困難になる

 福祉用具の活用や住宅環境の調整も大切であるが、介護は3度の食事をまとめたり、早く食べるように流動食にしたり、排泄をまとめて出すために浣腸にしたり、「人間洗濯機」で洗ったり、動かないように縛りつけたり等の効率化や省力化が許されてはならない世界である、と私は考えている。

 それが利用者の尊厳だけではなく、働く介護職の尊厳も奪うからである。表のように低賃金で、昼夜問わず重度者に対応するスキルや環境が整わない中で働く介護職は「思いはあってもストレスと重圧で」苦しむことが目に見えている。このままでは2025年を待たずに、介護人材不足が介護の現場を危うくしかねないのである。

3.介護研修に受講生が来ない、派遣会社が一人勝ち

 ヘルパー2級が初任者研修に変わり、「試験が導入され、実習がなくなった」ので受講生が集まらないのではない。ヘルパー2級のサービス提供責任者が3割減算になり、ヘルパー経験ではケアマネジャーの受験ができなくなり、福祉用具専門相談員の任用資格からヘルパーが外れた。これらの制度改正でのヘルパーへの攻撃が低賃金に加え、初任者研修の受講生を減らし、介護福祉士の養成校を定員割れにしているのである。

 一人でも新たなヘルパーを養成しようと、渋谷区の介護サービスを持たないNPO法人がこの春、初任者研修を6万3,000円、土日中心で実習を含め、通信教育と連携して17日間で開校しようとした。しかし、受講生が集まらず、中止せざるをえなかった。応募者には他の研修を紹介した。他方では人材派遣会社が低料金で初任者研修を行い、「自社に登録すると研修料無料」ということなどが行われている。事業の投資としての研修なのだ。福祉の現場も人材不足で派遣会社に頼らざるを得ないのである。

4.外国人研修制度を入れてはいけない

 厚生労働省は「外国人技能実習制度」の対象を介護職にも広げ、出入国管理法を改正すると発表した。農業や工場、建設業に続く門戸開放である。この外国人研修制度が最低賃金制度や労働基準法の適用されない「研修制度」であり劣悪な労働環境で、中間マージンを取る中間機関に搾取される問題のある制度であることは今までも課題とされてきた。介護職の低賃金を固定化する危険な制度である。

 喉から手が出るほど介護職不足に悩み、ショートステイを中止し、減算覚悟で人材不足で施設を運営している現場の弱みに付けこむ国の方針である。4月からの報酬減額を前にして、現場は事業継続のため、受け入れに積極的にならざるを得ない。日本語教育をする、施設でしか働かせないなどは導入の糸口である。しかし、介護の質は現場の努力以前の報酬の問題である。

 このような現実では、介護を受ける人も働く人も、事業者も将来に希望が持てない。介護保険の信頼は地に落ちる。利用者、介護職、事業者は現実の課題を明確にしよう。現場の実態を訴えよう。今できることをしないと未来は開けない。

日本ケアマネジメント学会 理事

服部万里子

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