ケアマネジャーはじめ介護・医療に携わる皆さまへ様々な最新
情報を深く分かりやすくお伝えする「シルバー産業新聞」です。

Care-new.jp

大中小 テキストサイズ変更RSS

シルバー産業新聞

介護保険と在宅介護のゆくえ
介護保険と在宅介護のゆくえ 連載412015年8月21日12時14分

福祉を、他者を蹴落とし生き残る競争社会の現場にしてはならない

1.加算を取れば単価維持、アップというけれど

 2.27%の減額がサービス事業所の経営に響いている。国は「加算を取得すれば維持できる」と加算を取らないのは努力が足りないと主張している。しかし、介護人材がいても介護の現場に来ない状況が続いている。ハローワークの募集は反応がなく、ネット求人は出すだけで費用が莫大で、リクルートできなければサービス体制加算は取得できず、派遣会社が一人勝ちの状況が続いている。大手でなければ生きていけない介護サービスは地域の福祉現場を狭めていく。

 介護職場に若者を親が送り出せる、競争社会でなく、「人に関わる仕事がしたい」と願う若者が価値を見出せる職場にすることが必要だ。

2.2割負担に伴うサービス変更の実態と利用者の生活実態を把握しよう

 「制度が変わったから仕方ないのです」。介護保険の利用者は何回この言葉を聞いてきただろうか。その度にサービスが利用できなくなり、自費負担が増え、医療保険や介護保険料も上がり、消費税も上がり、公共料金も、郵便代もアップしてきた。

 年金頼みの高齢者には、最後の年金ですら物価スライドの原則が崩されている。「長生きしたのが身の不幸」と言わせてはいけない。

 もちろんケアマネジャーは地域資源をフル活用し、自費の増加ではなく地域資源の開発をして、地域が支える体制作りが必要だ。「地域ケア会議」は要支援が段階的に新総合事業に移行する今こそ、地域の資源育成に力を注いでいこう。

3.ケアマネジメントの自己負担化による給付削減は暴言に近い提案
 
 国民生活基礎調査で国民の62%が「生活苦が増した」と回答し、過去最高の結果となった。特に高齢者世帯では平均以下の世帯は高齢者世帯の89.9%を占める。どの世代もそうだが、介護が必要になり、人の手を借りて生きていく人のサービスを削れば、高齢者は「生きていたくない」と思う人が増えていく。家族は負担で自分自身が生活できなくなることを恐れ、施設待機や「貧困ビジネス」にもすがりたくなる。

 国が社会保障の削減を「自己負担増」「サービス利用者削減」へ走ろうとしている現状で、全国老人福祉施設協議会が「2025年に向けたあるべき社会保障を目指して」と題した提案の「財政健全化に関する意見」の中で、「短時間リハビリデイサービスは通所リハビリで実施すべき」「ケアプランは自己負担で有料化し、給付抑制せよ」と提言しているのが、妥当性に欠けると考える。

 ある利用者は54歳で脳梗塞となり、麻痺による失語症で言葉が出ず、苛立ち、泣き、脳梗塞の親に暴力を振るい、精神病院に医療保護入院になり、共依存の親も息子に「死のう」と誘う状況だった。それを支えたのは「言語療法専門デイサービス」だった。3時間余の集中言語療法で、テレビを見ることや、相手の言うことが大筋で理解できるようになり、親への暴力もなくなり、仲間と歌を歌い、個別の訓練をうけ、改善している。

 この利用者の課題は山積みだが、短時間リハビリデイサービスが効果を発揮した事例だ。医療機関しかできない通所リハビリも選択肢だが(この利用者はこれも利用している)、入浴や食事を出すことが通所介護の役割とすることも一面的だ。私は、このようなワンパターンデイサービスこそ、利用者の生活ニーズに対応したデイサービスに変わるべきだと考える。

 さらに、ケアマネジメントを介護保険から自費に変更し、給付削減するとは暴言に近い提案だ。介護保険の利用者500万人の半数が要介護1~5で、居宅でサービスを利用している。その268万人を日々支援しているのがケアマネジメントだ。

 家族の調整、地域との連携、社会資源の導入、医療や看護、リハビリとの連携、介護サービスや福祉用具の活用から、緊急対応など多様な支援を日々提供している。これを自費にして介護保険制度が成り立つとは思えない。自分たちの生き残りのために他のサービスを蹴落とすこと自体、競争社会の姿そのものではないだろうか。

 もちろん、ケアマネジメントも利用者の負担増の中で、最適支援に今まで以上に力を入れ、誰からも必要性が認識されるように努力しなければならない。

日本ケアマネジメント学会 理事

服部万里子

「介護保険と在宅介護のゆくえ」カテゴリーの最新記事

シルバー産業新聞購読のご案内

発展する「シニアマーケット」の動向など、確かな業界情報はシルバー産業新聞から。

1年間(12回)
7,700円(送料・税込)
2年間(24回)
14,214円(送料・税込)
3年間(36回)
19,545円(送料・税込)

購読、書籍のお申込みはコチラ

  • 【お知らせ】電子版「シルバー産業新聞」
  • シルバー産業新聞申し込み
  • ハンドブック申し込み
  • SSL グローバルサインのサイトシール