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介護保険と在宅介護のゆくえ
介護保険と在宅介護のゆくえ 連載92013年1月21日18時37分

1.これ以上の給付抑制は介護保険不信をまねく

 消費税率を2015年10月に10%へアップするのと合わせて「社会保障制度改革推進法」が国会で決議され、社会保障制度改革国民会議が13年8月ごろまでに介護保険に関する見直しを提案する予定である。

 介護保険に関しては「介護給付の適正化」として軽度要介護者の制限が出る可能性がある。サービスの効率化では「複合型サービスの拡大」や、サービス付き高齢者向け住宅に複数サービスを併設し、効率的であることを理由として、給付を減額することが考えられる。また、「保険料負担の増大を抑制しつつ必要なサービスの確保をする」とし、生活援助などのサービス抑制や、1割負担の拡大も考えられる。

 介護保険スタート時から利用者が3倍に増え、今後も高齢化の進展とともに要介護者の増加が予測される中で、給付額が増加することは必然なのだ。保険料負担を抑制する場合には、利用者の制限、報酬単価の減額、自費負担への転換等しかないのだろうか。

2.生活援助を制限すると悪化が進む 

 介護保険の利用者は500万人を超えた。在宅の利用者が7割だが、在宅は要支援~要介護2までの利用者が70%を占める。一人暮らしの軽度者では、買い物に出ることが困難になったり、風呂場やトイレの掃除ができない、台所に立って調理ができない――などの生活上の支障がある人が多いのが実態だ。

 重度者への給付抑制は命にかかわるため、軽度者の生活援助を保険給付から外す動向がある。しかし、その結果、介護専門職が心身の状況を把握したり、脱水症状や肺炎の徴候を発見して予防したり、要介護者の持つ力を引き出し在宅生活の継続を工夫するなどのかかわりの機会を失い、状態が悪化したり、在宅困難に陥る人が増えることにつながりかねない。

3.入院に伴う悪化、在宅困難を克服するケアマネジメント 

 現在、在宅生活が困難になるきっかけに、脱水や骨折、肺炎、ノロウイルス感染などの急性疾患による入院がある。超高齢で要介護状態の人は抵抗力が弱く、入院をきっかけに廃用症候群が進み、肺炎が治癒しても、心身機能の低下により在宅への復帰が困難になる人が少なくない。

 この急性疾患に伴う入院から在宅への復帰を可能にするためには、ケアマネジャーのかかわりが重要だ。入院した時から「在宅に戻れる状態像」を医療機関に提示し、急性疾患の治療と同時に、入院に伴う廃用症候群からの回復リハビリを位置づけることが在宅復帰を左右する。そのことにより、病院も早期退院を具体化することができる。それをするだけのスタッフが医療機関にはある。

 また、ケアマネジャーは不在時の在宅の家屋のフォローや、入院中の洗濯や必要物品の手配、在宅への復帰を促す働きかけを具体化しなければならない。ところが実際には、入院するとケアマネジャーとは離れる(給付対象外のため)、在宅のヘルパーとの関係性も切断されてしまうのが現実だ。ここに問題がある。

 ケアマネジャーが継続的に在宅復帰を支援することに介護報酬があるべきだろう。また、ヘルパーが在宅復帰のために、洗濯物や留守宅の整理など復帰支援のかかわりをすることに加算が付くなどの、報酬上の見返りが必要だろう。入院と同時にケアマネジャーが在宅の状況を医療機関に情報提供し、在宅復帰ができる状態への機能の回復を医療機関とともに実践し、在宅の看護、介護、リハビリに移行することが、自立支援の医療連携だ。

 そして、入院期間を短縮し、施設入所を減らし、在宅で生活できる可能性を広げることが、介護給付の削減につながる。

 ただ給付抑制だけではなく、人間的な生活を支え、自宅で希望する限り暮らしが継続できる介護保険にしていくことが、高齢者に希望を与える。

日本ケアマネジメント学会 理事
服部万里子

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