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生き活きケア
生き活きケア(89)特養ゆうらく(鳥取県南部町)2014年10月31日21時17分

人生を決める福祉用具の活用 生活ツールで安全・安心のケア

 体に合った車いすと移乗時のリフトの活用を行う特養「ゆうらく」(社会福祉法人伯耆の国、山野良夫理事長)。2003年開設の一部3階建て(建築面積5,193㎡・延床面積6,492㎡)で、個別ケアをめざす全室個室ユニットが評価されて「医療福祉建築賞」を受賞している。施設内には、特養95床、ショートステイ5床と、デイサービス。「福祉用具は、その人の生活のあり方に直結するもの」であり、福祉用具のないケアは考えられないという。

 東方に伯耆大山を控える鳥取県西部の南部町に、福祉用具を活用した個別ケアを推進する特養「ゆうらく」がある。広い平屋部にウッドデッキの中庭があり、ここを支点に6つのユニットがつながっている。ほかに、2階に3ユニットがあり、計9ユニット。早期にユニットケアをスタートさせた。各ユニットは、中央にリビングがあり、個浴の浴室が設けられている。個室は18㎡ほどで、利用者の苗字を墨書きで書いた立派な表札が掛かる。意匠を施した、いすやテーブルがフローリングの床に自然と配され、いすや車いすに腰掛けた利用者が落ち着いた様子でそれぞれに時を過ごしている。

 「私たちのところでは、リフトがないとケアができない。リフトの利用が当たり前になっています」と、理学療法士の吹野美奈さん(36歳)。「故障でリフトが使えない時など、移乗時に職員が顔をしかめながら介助しているのを見ると、早く故障を直してリフトを使えるようにしなくてはならないと実感します」

 リフトの導入は慎重に行われている。「何よりも初回は急がないこと。人は普段吊られるという感覚はないので、なぜリフトを使うのかが分からないと、それだけで不安になります。いままで、他の施設で『よいしょ』と人の力で移乗させられているので、リフトのやり方を説明するのです。百数十キロのお相撲さんだって、大丈夫ですと。利用者さん自身がリフトの方が楽だと思ってもらえるように、じっくり試用を行います」と吹野さん。

 一つひとつの動作で「大丈夫?」と声をかける。少しでもこわそうだったら、そこで止まる。しゃべれない人もいるので、顔の表情をしっかりと見て、こわがっていないかよく見る。「そして、リフトが上がったと思ったら、移乗先にもう座っていて、移乗がすんだ。リフトが楽だと分かるのです」と言う。

先輩の体でリフト操作練習

 ゆうらくには、PTの吹野さんの他、福祉用具プランナー研修を受けた職員が5人いて、リフトなどの用具の導入にあたっている。

 新人スタッフは少なくとも2カ月間はリフトに触れない。食事や排泄などの介助の基本をまず学ぶ。「基礎がないと、リフトは使えない」。同施設で、長年福祉用具の指導に当たる福祉技術研究所の市川洌さんも、利用者の心身状況を把握し、コミュニケーションを大事にすることだという。「こわくて、こわくて、という利用者に、市川先生のしかたを見ていると、利用者さんとのコミュニケーションが肝心だとよく分かるのです」と吹野さんは話す。

 新人は、ケアの基礎を習得すると、いよいよリフトの手順を福祉用具プランナーから教わる。床走行リフトでシート型と脚分離型、それに個浴リフト。この3つを使えるようにする。休憩時間に、先輩スタッフの体を借りて練習する。

 「リフトの練習台になるのを嫌がる人はいません。利用者さんが離床してもらえるように、後輩にもがんばってもらわないと、その人の生活が守れないからです」。リフトを利用する理由をスタッフ全員が共有しているという。

 こうして1カ月後にプランナー2人が試験官になって試験が行われる。合格基準に達しなければ、リフトは使えず、また1カ月後の挑戦になる。

 「試験は甘くはない。健常人で試験するのですから、やりやすいのです。現場は拘縮や変形がみられ、試験より難しいからです。何のためにそうするかを動作ごとに習得している必要があります」と吹野さん。

 9ユニットのゆうらくで、リフトは1ユニットごとに床走行とベッド固定型がそれぞれ2台ずつあるほか、お風呂には各ユニットに個浴用リフトを設置。天井走行式リフトもある。スタンディングリフトがあり、トイレ介助などで利用される。

 床走行リフトは4機種が導入されており、キャスターの大きいタイプや電動で足部が開閉するタイプが、操作性が良いという。ベッドによってはリフトの足部が入らない機種があり、困ることがあると、吹野さんは感じている。

いま自分のケアをどう思うか

 車いすはその人の心身状況に合わせてフィットできるモジュラータイプが揃えられている。調整して使いはじめるが、着座姿勢をしっかり取るためには介助方法が大切で、慣れから雑に座らせてしまっている場面もあった。
 今年、施設で自分たちのケアを振り返る研修会を実施した。「いま、自分のケアをどう思うか」「実技はどうか」「5年後どうなりたいか」をテーマに各回2時間、計3回行っている。この研修会を通じて、吹野さんは改めて、スタッフみんなが強い思いを持っていることがわかった。もっと介護に向き合いたいけれども業務に追われて思うような介護ができないでいることも分かったという。

 「福祉用具を活用すると、その人の生活が変わります。障がいをもったり、歳を重ねることを、マイナスイメージで捉えられがちですが、福祉用具のことをみんなが知って、福祉用具を身近なものに、当たり前のものにしていけば、QOLの高い生活ができ人生が変わるのです。その人がめざした生活や人生を実現する近道が福祉用具の活用だと思います」

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ベッドから車いすへ床走行リフトを使う

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