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生き活きケア
生き活きケア(94)特養「日高博愛園」2015年3月24日14時48分

EPAインドネシア人2人介護福祉士合格

0214iki.jpg 和歌山県御坊市、眼前に海を見下ろす高台に、特別養護老人ホーム日高博愛園(社会福祉法人博愛会、小林隆弘理事長)がある。利用者の平均年齢は85.5歳、平均要介護度は4.1で推移している。同施設では、09年から経済連携協定(EPA)に基づく外国人の介護人材受け入れを行っており、現在インドネシア人6人、ベトナム人2人を受け入れている。そのうちインドネシア人の2人が介護福祉士国家試験を突破、残る6人も後に続こうと日々業務に励みながら専門知識の習得に向けた勉強を重ねている。

憧れの日本へ

 インドネシア・ジャワ島出身のニケン・ヤスティ・プラティウィさん(29)は、09年11月に介護福祉士候補者として来日、専門研修施設での研修を経て、10年1月に日高博愛園へやって来た。ニケンさんは、インドネシアでは大学でIT関連の勉強を積み、その後1年間ほど小学校で子どもたちにパソコンの操作などを教える教諭を務めていた。「兄が日本に滞在した経験があったことや、子供の頃から『ドラえもん』や『キャンディ・キャンディ』などのアニメなどを通じて日本への憧れが強くなり、いつか日本を訪れる機会があればと思っていました。そこで、EPAでの人材募集があることを知り、思い切って応募しました」。ニケンさんには、以前に祖母が脳梗塞で倒れ、その後生活全般に介助が必要になったが、制度やサービスが整備されておらず、十分な介護ができなかったことも頭に残っていた。

 3カ月間、現地での研修を通じて日本や介護に関わることなどを学び、選抜試験を通過して、来日が決まった。さらにその後半年間日本語を勉強した後に、来日した。日本では箱根の研修施設で研修を受け、博愛園へ入職した。

現場で研鑽積む

0214iki2.jpg 「それまで介護の必要な高齢者と接する機会はほとんどなかったので、実際現場に入ってみると分からないことばかりでしたが、ご利用者と接する中でどのようなケアをすればよいのか理解できてきました。特に認知症のある方では、その方の気持ちに寄り添って対応することが大切だと学びました」とニケンさん。「ご利用者一人ひとりの生活状況について、引き継ぎの中で他の職員から情報を得て、適切なケアに努めています」と話す。ニケンさんは、ショートを含め23人が入所する旧館2階フロアを担当、日々のケアでは事故発生リスクが高い入浴介助の際に、特に安全に気を配りながら取り組んでいるという。

 「ご利用者も最初から本当に気さくに接してくれて、びっくりしました」とニケンさん。「よく気がつくし、とてもやさしい」と利用者からの評判も上々。小林理事長も「本当にしっかりしているし、いつもニコニコしていて、とにかくいい子です」と目を細める。「ニケンさんの頑張りが、他の職員にもいい刺激になっているようです」。

専門用語の習得と方言の壁

 現場では介護の実践的な部分と日本語のさらなる習得を積み、その上で介護福祉士国家試験へ向けた勉強も進めていった。昼食後の約2時間に試験対策の勉強時間を設け、施設職員が教師役となり専門知識の習得を図った。それに加えニケンさんは、帰宅後や早朝にも勉強を重ねた。「日本語を覚えるだけでも大変な中で、さらに漢字や難しい専門用語を覚えるために、相当努力していました」と、ニケンさんのサポートにあたってきた寮母主任の大江和子さんは振り返る。

 日常会話ができる程度の日本語能力で来日したニケンさんだったが、コミュニケーション上の最大の壁が方言だった。利用者から「今日は何日?」という意味で「今日はいくか?」と聞かれて「どこへ行くの?」と尋ね返してしまったこともあった。そんな時もすぐに周りの職員に質問して、今では立派な(?)和歌山弁を駆使するほどにまでなった。「この施設に来て本当によかった、と思えるぐらい職員やご利用者の皆さんに優しくサポートして頂いて、だんだんと仕事でも言葉の部分でも自信がついていきました」とニケンさんは微笑む。

 イスラム教徒であるニケンさん。施設側は、同教の戒律で禁じられている食材や、1日5回ある礼拝の時間と場所の確保などについても配慮を行っている。

介護福祉士に合格

 日高博愛園で3年の実務経験を経たニケンさんは、一昨年の介護福祉士国家試験に挑んだ。1日2~3時間の問題集を中心とした反復学習や、模試などで直前対策を講じたニケンさん。「勉強するほど分からないことがあることに気づいて、不安になりましたが、それまで積み重ねてきたことを思い出して、試験に臨みました」。実技試験は、介護福祉士養成施設等が実施する「介護技術講習」を受講して免除された。筆記試験を終えた直後は、ちょっと不安だったというニケンさん。しかし日々の努力の甲斐あって、見事一発で合格を勝ち取った。EPA候補者全体の合格率が36.3%という狭き門をくぐり抜け、和歌山初のインドネシア人介護福祉士となった。その喜びを、まずインドネシアの母に電話で伝えたニケンさん。国家資格合格を手土産に、来日してから初めて母国へと一旦里帰りした。ちなみにニケンさんは昨年、同じ施設で働く男性と職場結婚。家庭も築き、公私ともにますます充実した日々を送っている。

 同施設では現在、日中「おむつゼロ」の取り組みを行っている。移動が可能な人はできるだけトイレを使い、できる限り布下着と尿取りパッドという軽装備で過ごしてもらうように取り組んでいる。その中で、ニケンさんもより質の高いケアを目指して奮闘している。「ここで、まだまだ色々なことを学んで、いずれはケアマネジャーの資格にも挑戦したいです。インドネシアでは介護が必要な人への制度やサービスはまだまだ不十分ですが、いつかは母国で、日本で身につけた専門知識や技術を活かす機会があればと思っています」と話してくれた。

先輩たちに続け

 ニケンさん来日の翌年に、同じくインドネシアから介護福祉士候補者としてプトゥ・インテン・クルニアティさん(28)が同施設に入った。プトゥさんも、昨年の介護福祉士国家試験でニケンさん同様、1回目の挑戦で合格を果たした。取材当日は業務で手が離せず会えなかったが、子供の頃から出身地のバリ島で習ったバリ舞踊が得意で、施設での誕生日会など様々なイベントの際に、あでやかな衣装を身にまとい披露する踊りは利用者からも大好評とのこと。

 そんな2人の先輩に続けと、現在日高博愛園では、昨年8月に入職した23歳のベトナム人2人、12月に入職した22~25歳のインドネシア人4人のEPA介護福祉士候補者が奮闘中だ。6人とも、月曜日から金曜日の午後1時から3時までを、3年後の介護福祉士試験を見据えた専門知識の学習に充てている。

 研修室にお邪魔すると、講師を務める介護係長の湯川光永さんから、認知症の中核症状とその対応についての講義中。「BPSD」「アスペルガー症候群」「弄便」などの専門用語が次々と飛び出し、ホワイトボードいっぱいに漢字の専門用語が並ぶ。テキストは、施設で使われる通常の研修用資料と同じものを使っている。候補者たちはみな、母国語と日本語を参照できる医療・介護用語のハンドブック片手に、真剣な表情で講義を聞いている。今は皆さん一様に、職員や利用者の方言が分からずに困っているそうだ。しかしこちらもニケンさん同様、徐々に順応していずれ和歌山弁を上手に操れるように、そして介護福祉士として立派に活躍してくれることだろう。

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ベトナム人2人とインドネシア人4人が介護福祉士へ向け猛勉強中

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