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銀幕のいぶし銀
『八日目の蝉』(2011年)2011年5月31日00時00分

監督:成島出 出演:井上真央、永作博美 

 
 
 角田光代の原作がサスペンスでありながら大いなる感動を誘ってミリオンセラーとなり、NHKでもドラマになった『八日目の蝉』がいよいよ映画化されることになった。監督は『孤高のメス』の成島出ということで、この原作に相応しい筋金の入ったストレートな演出が期待されるのだが、その予想を全く裏切らない、実に日本映画らしい感動作として完成したのである。

 物語は、永作博美扮する母親と幼い娘の数奇な逃走劇と、その10数年後の娘の生きざまを熱演の井上真央によって、同時並行的に描き出していく。永作はある男と不倫関係にあるが、男の妻に赤ちゃんが生まれたのをきっかけに関係を解消するつもりで、こっそり赤ちゃんを覗きにいく。実は永作は男との子供をおろした経験があり、そんな複雑な心境が相まって思わず赤ちゃんを連れ去り逃げ出してしまう。自分が犯した事の重大さを感じながらも、無垢な赤ちゃんに何か人生の希望を感じた永作は、逃避行を続けながらひとりで子供を育てる決意をする。そこから様々な土地を転々とし、周りに助けられながら母一人娘一人の小さな幸せな生活は意外にも長く続くのであるが、やはり最後の時は来るべくして来てしまうのである。

 さてその娘も生みの母親の元に無事帰されたが、名前も変わり生活も一変してしまった娘は実の母親にどうしてもなじむことが出来ず、いつしか家族と疎遠な暮らしになっていた。愛情というものを信じられなくなってしまった井上真央は求められるがままに妻子ある男と関係を重ねていた。そんなある日、井上の過去を知る女が現れ、自らにとってパンドラの箱となっていた幼少期を思い返しているうちに、井上は幼い頃の永作との暮らしの足跡をたどる旅へと向かい、思いを馳せていくのである。

 母子2世代にわたる長大な物語が入れ子構造になっている複雑な構成でありながら、微塵もそんな事を感じさせず一気に観せきってしまうのは、やはり永作と井上の母子の心情おのおのを軸にして丁寧に物語を紡いでいるからであり、これこそ日本映画の十八番ともいえるドラマツルギーの典型なのである。永作博美・井上真央ともに非常に難しい役どころをまさしく熱演で魅せてくれるのだが、特に永作が演じる「母親」が、母になれなかったが故の強烈な母性愛への欲望がそのまま純粋で絶対的な愛情になっているという、理屈ではあり得ない存在を全く違和感なく体現しているところが素晴らしい。これは、例えば「ロミオとジュリエット」のような絶対的普遍的恋愛悲劇を、現代において母と娘の愛情をテーマにやっているようなもので、その意味で『八日目の蝉』は普遍的な感動をもたらす秀作といえるのである。

(日活・監督 矢部浩也 http://ginmaku.tripod.com/

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