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シニア住まい塾《102》特養「稲村ガ崎きしろ」(鎌倉市)2016年8月 8日08時10分

ベッドシェアの活用で在宅生活を叶える

玄関ホール横にあるボランティアが運営する喫茶部.JPG

 特別養護老人ホームの在宅入所相互利用は「ベッドシェア」とも呼ばれ、2006年にできた制度ですが、なかなか普及していません。

 特養は申し込んでも待機人数が多いため入所できない、と新聞などでしばしば報道されています。そこで、特養のひとつのベッドを複数名の利用者で相互に使用する、という制度ができました。

 入所中に生活改善をはかり、在宅生活が続くように支援し、家族の介護負担を軽減する、という意味も含まれています。また、特養は終末期の住まい、入ったら最期まで、というイメージが浸透しているため入所をためらうのですが、特養に入っても家に戻れる、という希望を持って入所するという意味も込められています。

 もうひとつ、「シニア住まい塾」の会員は年金生活者が多いため、特養のユニット型(全室個室)は、月費用が15~18万円程度かかるので、費用負担が大きすぎると言います。

 在宅介護の場合は5~6万円で済むので(介護保険が1割負担の人の場合)、1年のうち3カ月だけユニット型特養に入って、また家に戻れば年金をやりくりしてなんとか生活できます。ちなみに利用料金は、介護保険の1割(所得によっては2割)負担分と、食費、居住費です。

 ところが制度はできているものの、実際に「ベッドシェア」をしている特養は少ないです。神奈川県で実施している、鎌倉の特養「稲村ガ崎きしろ」を訪ねました。

 江ノ電の稲村ケ崎駅から山の方に向かって徒歩15分、坂道の住宅街を登りつめた所にあります。社会福祉法人きしろ社会事業会(田尻美知子理事長)が運営する全室個室のユニット型特養で定員65人、ショートステイ10人の規模です。

 なおこの法人は、他に鎌倉市に従来型特養の「鎌倉プライエムきしろ」、軽費老人ホームA型の「きしろホーム」、デイサービス2カ所を運営している歴史ある法人です。稲村ガ崎きしろは、現在1ベッドのみベッドシェアをしています。

 生活相談員の府川広介さんは、もともとこのホームで介護士をしていた方で、介護にも精通しており、4年前から生活相談員をしています。

 特養のショートステイとベッドシェアでは、ショートステイは居宅のケアマネさんが管理する(申し込みや、介護保険点数に応じての日程調整)のに対し、ベッドシェアは特養のケアマネさんと居宅のケアマネさんが共同で支援計画していくところに大きな違いがあります。一定期間特養に入居しても退居し、在宅での支援計画も立てていくことが、連続したケアを提供していく大きな鍵です。どちらも介護保険で定められている制度です。

 ショートステイはなかなか空きがない、区分支給限度基準額を超えると申し込めない、などが欠点です。ベッドシェアは、他にベッドシェアを利用したいという希望者がいることが条件で、この点がむずかしいところです。

 ベッドシェアをする際には、居宅のケアマネを始め、居宅のヘルパー、家族と、特養の全職種が集まり、合同で事前の打ち合わせをします。特養側と居宅側の合意が必要で、その上で利用者、家族に目標や方針の内容を説明し、同意を得た上で始まります。特養には1日あたり30単位が加算されます。

 なお、特養にベッドシェア中は、家にいた時の状態、改善したい点、本人の希望も含めてのカンファレンスは3カ月間毎月行い、最後の1カ月は自宅での生活を見越したカンファレンスが義務づけられています。

 特養内で在宅サービスと同じようなケアを続ける、家に帰っても同じような介護が受けられる、さらに再利用する場合も同じように、です。在宅で歩行力が低下してくると、トイレまでもむずかしくなりおむつ使用になり、便失禁が多くなる場合があります。そこで特養にいる間に歩行を鍛えて、トイレでの排便を習慣にし、家に戻ることを目標にします。家にいるよりも栄養状態がよくなり、規則正しくなることで、体力も向上し、全体的に改善する例がほとんどです。双方の目とケアが多数入るので、より密度の高いケアを受けられるといえるでしょう。

 なお、特養内でのリハビリは生活リハビリが主ですが、医療保険を使っての訪問マッサージは使えます。さらに主治医の許可を得て、家族がリハビリに連れて行き、さらに改善して家に戻る例もある、ということでした。

 府川さんは、「当初はこの制度が知られていなくて、利用者がなかなか集まりませんでした。居宅のケアマネさんに説明しても、ベッドシェアをしばしば利用すれば特養の入居順位が早くなるのかと聞かれたり、家族に説明しても、家で看られなくなったから特養に入りたいのであって、3カ月で戻ってくるのでは困る、と言われたりしました」と言います。稲村ガ崎きしろでも、利用者が集まらなくて、いったん中止にしたことがあるそうです。

 ベッドシェアの実施例として、Aさんは特養に入所した方ですが、認知症症状のない方でした。入居者に認知症の方が多くて、「話し相手がいない、もういやになった」と言われ、ベッドシェアを勧めました。家に帰るという希望が持て、生活リハビリにも励み、家に戻られて、介護保険の居宅サービスを利用して暮らしています。

 Bさんは、息子さんと暮らしていましたが、息子さんが食事も作れず、入浴や排泄の介助もままならなくて、居宅のケアマネさんからの紹介でベッドシェアに繋がりました。ホームにいる間にどんどん状態がよくなり、現在は軽費老人ホームA型に入所をして、幸せに暮らしています。

 15年から特養側への制度も変わり、昨年度までは1室に固定して使うこととされていたのが、部屋は変わってもよくなったこともあり、特養としてもやりやすくなりました。また15年度の介護保険の改正で、特養の入所は原則要介護3以上の人となりました。

 府川さんは、ベッドをシェアしたい人の兼ね合いで、すぐに、いつから利用可とはいえませんが、3人いれば予定がたつので、ベッドシェアを利用することで少しでも状態を改善してほしい、と言われました。

 すでに特養に入居している方でも、ベッドシェアをして「もう一度家で暮らしたい」と思っている方は、再度申し込めます。家にいて、時々ショートステイを利用する方で、こちらに切り替える方もいます。

 あくまでも本人が「家で暮らし通すという思いを続けられるように」が主目的なので、ベッドシェアの限度は3カ月です。しかし、再挑戦もできます。

 医寮に関しては、特養にベッドシェアしている時には施設担当の医師で、退所後は在宅時のかかりつけ医にお任せします。

 この制度を実施している特養はまだまだ少なく、一般の人に知られていません。介護は社会で担う、の一部として周知が高まることを望みます。

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