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【現場最前線の今・49】 発達障害の人たちの個人生活支援 1-22011年5月31日00時31分

(その1よりつづく)

 アキラくんは地域の普通高校に通っている青年で、趣味はガンダムのプラモデルを作ることだ。小学校低学年のとき自閉症で軽度知的障害があると診断されたが、保護者の方針で本人には告知されず、これまでずっと普通教育を受けてきた。小学校・中学校ではちょっとしたいじめやからかいはあったが、持ち前の穏やかな性格と家族や先生のフォローでここまで乗り切ってきた。しかし、高校に入ってから、アキラくんは突然怒りだしたり髪の毛を抜いたりする行動が出てきた。保護者の相談を受け最近の様子を確認すると、アキラくんは授業に全くついていけてないことがわかった。本人に聞いてみると、「特に数学や古文は全然わからない」「友だちは一人もいない」「親にプラモデル作りを止められ、勉強しろとばかり言われる」とのことだ。アキラくんは授業をさぼったり愚痴を言ったりすることはなく、これまで問題が表面化してこなかった。しかし、彼の知的レベルでは普通高校の授業内容を理解することはもはや困難だ。彼にとって学校に行く意味はなんだろうか。

 シンジさんは20歳の青年。重度知的障害で自閉症の症状も強い。自宅から生活介護施設に通っているが、家でも施設でも暴れることが頻繁で、家族も支援者も疲弊している。学校時代、怖い先生の前では大人しく、親もスパルタ的な対応をしてきたという。しかし、最近は力関係が逆転し、強く叱ってもシンジさんは何度も相手に向かっていく。周囲は「問題行動をおこす困ったシンジさん」ととらえており、入所施設か精神病院に入ってもらうしかないという意見も聞かれるようになった。しかし、彼がイライラしたり混乱をしたりする原因はなんだろうか。彼の言い分や置かれている立場はきちんと配慮されてきたのだろうか、と疑問がわく。

 トモコさんは30代前半の女性。これまでも離転職を繰り返し、半年以上同じ職場にいたことはないと自嘲する。大学生のときに抑うつ症状が強くなり休学、その後いくつかの医療機関に行き、ADHDやアスペルガー症候群と診断された。しかし、両親はただの怠け癖だととらえており、結局彼女は一人暮らしをする。片づけが苦手で部屋は散らかり放題。お化粧やファッションにも無頓着で、最近は「チョコレートにはまっている」とのこと。発達障害者支援センターに月1回相談に通っているが、「あそこは話を聞いてくれるだけで、何もしてくれない」と諦め顔で言う。彼女が定職に就く見通しはまだない。

 発達障害者支援法はできた。一般の書店で発達障害に関する書籍を目にすることも普通になった。学校では、知的な遅れのない高機能自閉症やADHD、LDの子どもたちも特別支援教育の対象である。しかしながら、それだけで一人ひとりの日常生活が変わったわけではない。むしろ、当事者も家族も、そして支援者も困惑し、徒労感にさいなまれている。

 世の中の認知度は高まったが、理解度や改善度は微々たるもの、というのが筆者の印象である。自閉症eサービスやその他の支援機関が担うべきことは、発達障害があって生活に困っていたり周囲から理解されずに孤立していたりする人たち一人ひとりに対して、具体的な支援を講じることだ。その担い手である人材を育成し、有効な支援方法を確立し、そして日々実践していくことが急務だ。当事者・家族と向き合っている場所が、支援現場の最前線である。

(特定非営利活動法人自閉症eサービス理事長 中山清司)

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