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在宅栄養ケアのすすめ (54) 中村育子 多職種を巻き込み 「食べ過ぎ禁止令」 [2018/07]2019年3月27日00時10分

 

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訪問栄養でできること(3) 

 今回は低栄養とは真逆、過栄養(つまり、食べ過ぎ!)への対応を紹介します。

 Sさん(80歳女性、要介護3)は糖尿病で、食事制限が必要です。そのため、1日の摂取エネルギーは1400kcalに設定しています。要介護3で調理は困難、独り暮らしですので、朝・夕食は配食サービスで糖尿病食(1食500kcal)を利用、昼食のみヘルパーが買い物、調理を行います。昼食で残り400kcalを摂取する計算です。

 糖尿病の人の中には、甘い物や炭水化物が大好きな人が沢山います。食事指導を行っても、在宅ですので、こちらが居ない時に好きな物をついつい食べてしまう、といったケースはこれまでも数多く遭遇しました。

 Sさんもその1人です。夏場は比較的状態は安定していたのですが、年末~年始の3カ月間で、なんと52kgから60kgへ8kgも体重が増えました。ちなみに身長は148cmですので、BMIは約27.4となります。

 最初、Sさんに聞くと、「特に間食はしていない」と返ってきましたが、そんなはずはありません。ヘルパーに聞いたところ、昼食は決められた献立のみ食べていましたが、問題は、食材買い出しの時に、食パンや菓子パンを一緒に買っていたことです。Sさんがヘルパーに頼んでいたのです。それをヘルパーが帰った後に、食べていたことが分かりました。

 しかも、驚くのはその量です。Sさんは1度に食パン1袋(1斤)分を全部食べてしまうのです。これだけで1000kcal前後あります。さらにマーガリンやジャムを塗れば…と考えると大変なエネルギー量です。また、バナナも1房(4~5本)を一気です。ある日は、夕食後にわざわざお米を2合炊いて食べたこともあったそうです。

 

全員でルールを守る

 どうも、Sさんの場合、私が1対1で説明しても、話は聞いてはもらえますが、納得までは至っていない様子でした。そこで、皆の力を借りることにしました。サービス担当者会議を開き、主治医や事業者、本人に出席してもらいました。

 まず、ヘルパーに対しては、パンやお菓子を買うことは厳禁、とクギを刺しました。Sさん本人には、改めて糖尿病のリスクについて主治医と共に説明し、3食以外でおやつは1日バナナ1本程度にとどめるよう、その場で宣言してもらいました。

 このように、全員が顔の見える場でルールを作り、共有しておくことは、普段一堂に集まることができない在宅ケアでの連携において効果的な手法です。

 この日をきっかけに、Sさんは行動変容を起こすことに成功しました。糖分を制限されることは、本人にとってストレスの原因にもなります。体重は通所介護で測定しつつ、2週間毎に自宅を訪問し、無理なく取り組めているかを観察しました。これを続けた結果、6カ月で体重を5kg減らすことができました。

 糖尿病は、悪化が進めば腎症・神経症・網膜症などの合併症を引き起こし、また足が壊疽(組織が腐る)することもあります。放っておくと、とても怖い生活習慣病の一つなのです。

 こうしたリスクを丁寧に説明し、なぜ食事制限を行わなければならないのか、治療食が必要なのかを理解してもらえるよう、コミュニケーションを繰り返さなくてはなりません。一つのゴールとしては、食べたものを本人の口から正直に言ってもらえる関係性を築くことです。

 食習慣をできるだけ尊重したい場合は、例えば砂糖の代わりに「パルスイート」(味の素)や「マービー」(H+Bライフサイエンス)といった、糖質を抑えた甘味料を使用するのも一つの方法です。

 

福岡クリニック在宅部栄養課 日本在宅栄養管理学会副理事長 中村育子

2018年7月10日号

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