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遠望
遠望155 考える作法 期末こそ次期に備える2013年4月 4日13時31分

 年が明けてから、週にいちど大学院生たちが部屋にくる。

 院生は3人、彼らと歳のちかい秘書嬢も加わり、筆者とあわせて5人。1時間ほどのコーヒータイムである。

 新聞やネットの記事をみて、それが何を意味するか、スポーツや囲碁・将棋のトップの人たちは、勝負の勘どころでどう考えているか。企業の動き、就職活動も話題になる。

 研究や修士論文の中身は冴えた准教授らがみてくれるので、研究にとり組み、社会でやっていくのに必要な、ものの見方と考え方、意思と心をつくる1時間である。

 注意すべきこともある。どこまでこちらから言うか。

 若者は自分で成長力をもっており、創造性、爆発力がある。それは、教えても身につかず、本人が見つけていくことである。その点、さわりすぎはよくない。

 一方、競争の激化で安直なノウハウ指向になり、それがネットで共有される。その結果、価値ゼロならともかく、マイナスのような情報があふれ、そういうものほど耳に入りやすい。

 よってこちらは、彼らがもつ可能性を本来どおり発揮させる、ノイズを遮断して気にならない方法を伝える、ヘンな「常識」を断固違うと打ち消す、などをする。

 そこでは個別の方法論より、大筋のモノの見方や考え方、そうした見方や考え方を自分でみつけるコツが鍵になる。

 本当は、こちらの雰囲気に触れているだけで、彼らの意識が深い方に向くのが理想だ。古来、すぐれた師弟関係はそうとされてきた。ただ、それには師弟ともに、まだ少々修行が要りそうだ。

 ところで、話をする院生は、修士1年生である。なぜ彼らか。

 年末から2月にかけて、卒業論文や修士論文は仕上げをする。10月に着任した筆者は、前任の教員から院生ごと受けついだので、いわば、第3コーナーから伴走している。

 毎週、全員参加のゼミがあり、論文の進捗状況が報告される。気づいた点はそこで指摘してきたが、やはりどうも、2年生になってからでは遅いようだ。

 研究を穴掘りに例えると、深さ1メートルのをたくさん掘るか、1つでも深いのを掘るか(ふつう後者がよい)。掘る方法は他にないか、そもそも、穴でなければならないか、などをヨロコンで議論するような姿勢だ。

 こうした呼吸を伝えるのは、煮詰まってからでは遅い。それでまずはと、1年生に声をかけた。

 日ごろ勤める東京大学では講座を受けもち、学生の指導教員なので、こういうやり方である。

 日本福祉大学では講義だけ。修士1年生が対象、社会人がほとんどだ。

 ここでは、文章の書き方、論理の展開、統計による分析、論文の枠組など、修士論文の基本的な作法を演習する。これを、10年あまり続けてきた。

 状況に合わせてTPOは異なるが、修士の一年目に土台をつくるという点は同じである。

 年度末が近づき、仕事の仕上げが求められる毎日である。こういう時は、目の前の仕事をちゃんと仕上げることで気持ちがいっぱいになる。

 一方、せっぱ詰まったときだからこそ、痛切に気づくこともある。「日ごろからちゃんとしておけば」ということである。

 では、どこを、どうすればよかったか。

 そこで、時間を少しずつさかのぼって考える。

 囲碁や将棋でいえば、待ったをして元の局面に戻すような感覚だ。

 やってみると、1手や2手戻すだけではよくならないと気づく。どんどん戻ると、何十手も前の、試合がはじまったころまで戻ることになる。

 問題は最初の方からのつみ上げかたにあった、すすむ方向が元からずれていた、ということである。

 修士1年には、そういう意味がある。

 これから温かくなって、桜が咲いて、気持ちが華やいで、ぱっと散る潔さがあって、で、冬のことはぜんぶ忘れてしまう。

 ま、花を愛でる日本人としては、それもよい。だが、1年経つと、確実にいまの時期はやって来る。

 気持ちの9割は目のまえの仕上げに、でも、あとの残りで先に備える。メモに書いておく、周りに話す、できれば行動にうつす。

 1年後に、楽しい2月をむかえたい。

日本福祉大学客員教授

後藤芳一

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