ケアマネジャーはじめ介護・医療に携わる皆さまへ様々な最新
情報を深く分かりやすくお伝えする「シルバー産業新聞」です。

Care-new.jp

大中小 テキストサイズ変更RSS

シルバー産業新聞

遠望
遠望168 考える作法 自らを解釈しない2014年3月20日07時00分

 奈良東大寺のお水取りで3月がはじまる。続いて大阪で荒れる春場所・大相撲三月場所、月末からは甲子園でセンバツ。これで関西は春をむかえる。

 大阪出身の筆者は、いまもよく高校野球を見にいく。初めは野球自体への関心から、勤め人をしていると監督の采配やチームの運営が参考になった。

 いまは教員として、監督の若い人を育てる姿勢に目がいく。その目線でみると、試合開始前のノックが味わい深い。

 守る選手は、自分がノックで育ててきた生徒たちだ。一人一人の技量が頭に入っている。

 性格もそうだ。調子に乗ると実力以上を発揮するタイプ、能力はあるが舞いあがりやすいタイプ、茫洋としていて大舞台で肝がすわっているタイプ。

 試合前のノックは選手たちにボールにさわらせ身体を動かして落ち着かせる、グラウンドのコンディションをつかませること。監督が一人一人と会話しているようだ。

 だからノックは大切だ。よって監督自身がすることが多い(ノックバットが振れなくなったことで引退を決める監督もいる)。

 さて大学の話。筆者の講座では、毎週開くゼミがノックの場だ。各回2時間ちかく、修士2年、同1年、4年生のいずれか2~3名ずつが修士論文や卒業論文の進捗状況を発表する。3週でひと回りする。

 そうした準備を経て2月半ばに修士論文と卒業論文の最終発表会があり、教え子たちは無事に卒業していった。

 ゼミでは准教授が内容について的確に指摘する。筆者は、考えられるかられないかギリギリの事態を示して、「こういうことは起こらないか、その場合でも元の答えが正しいか」とちゃぶ台返しをやる。

 学生はまじめな人が多いので、じっと固まったり(やり過ごしているのかもしれないが)、准教授の顔をみたりしている。

 ただ、1年続けると慣れるのか、多少は余裕をもって答えを返すようになる。

 ノックでいうと、准教授のは守備範囲内にきつい打球。

 筆者のは打球とバットが一緒に飛んできたら(三塁や投手へのゴロでたまに起こる)、とか、雨で池のようになったグラウンドで打球はどう転がるか(甲子園クラスの高校はその練習もしてくる)とか、そもそもなぜ野球をやらねばならないか、という具合である。

 学生のゼミは若い教員(准教授や助教)にまかせて自分は出ない教授もいるようだが、筆者はほぼ全部出席する。

 こういう珍問を思いつくのは、やはり年の功もあるので。ただ実は、筆者自身が楽しいので、ということは白状しなければならない。

 ところでノックのなかには、勝負観のようなメニューもある。ピンチのしのぎ方、流れが来たとき/来ないときの処し方など。

 相手は工学部の学生なので、数式だけではないことがあると、筆者はことさらに力説する。

 その点、五輪に出る人たちは超一級の先生だ。2月23日までロシアのソチで開かれた冬期五輪、今回はなんといってもフィギュアスケート女子シングルの浅田真央さんだ。

 2日目のフリーで建てなおした演技は、その間、音がすべて消えたように引き込まれた。

 筆者が注目したのは、初日のショートで16位だった後の浅田さんのコメントだ。マイクを向けられて「(自分でも)わからない」を繰り返した。

 ふと思い出したのは、「トップへ行く人は、(自らを)解釈しない」ということである。中原、谷川、羽生という歴代の名人は、小さい頃からそうだったらしい。過信もよくないが、悲観はもっとよくない。

 要は「あなたの可能性がどこまでか、(天は)あなた自身に評価せよと頼んでいない」という感覚だ。解釈するのは僭越、神様を怒らせる。

 名人たちは共通して、時には楽観すぎるほど前向きな姿勢で才能を開かせた。過信と取り違えそうだが、「ダメとは言われていない、よって前をみる」という感覚であろうか。

 これは天性のように思える。将棋の神様、野球の神様、フィギュアの神様に愛された人たち。浅田さんのコメントに、それを感じた。2日目のリンクには神様がいた。

 ことし卒業する諸君には、同じ時期に開かれた五輪の記憶とともに心に刻んで欲しく思う。

<シルバー産業新聞2014年3月10日号>

日本福祉大学客員教授

後藤芳一

「遠望」カテゴリーの最新記事

シルバー産業新聞購読のご案内

発展する「シニアマーケット」の動向など、確かな業界情報はシルバー産業新聞から。

1年間(12回)
7,700円(送料・税込)
2年間(24回)
14,214円(送料・税込)
3年間(36回)
19,545円(送料・税込)

購読、書籍のお申込みはコチラ

  • 【お知らせ】電子版「シルバー産業新聞」
  • シルバー産業新聞申し込み
  • ハンドブック申し込み
  • SSL グローバルサインのサイトシール