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遠望
遠望173 考える作法 詰メ込ミノススメ2014年10月21日17時18分

 「ふつうは骨盤を立てようとする、そのアプローチがそもそもおかしい」「椅子に座ると、骨盤から背骨はまっすぐ直立しているか、実際は背骨はもたれて支え、骨盤は後傾している」と村上さん。

 「骨盤を支持する方法は、かつてA工房がティルトする車いすで、ヒンジを背もたれと座面の角より少し前においたのがあった」と筆者。

 お盆のすこし前、村上潤さんが研究室を訪ねてくれた。お目にかかるのは13年ぶり。

 村上さんは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が1993年に始めた福祉用具開発の補助金(福祉用具実用化開発費助成事業)の1期生。座位保持装置をつくる工房を創業したばかりの村上さんは、助成制度を利用してティルトする装置を開発した。

 筆者は経済産業省からNEDOに出向して、助成制度を立ちあげる仕事をした。その後、村上さんは発展させた工房を後進にゆずり、新しい座位保持の方法を世界に広める活動をしている。

 ところで本稿で主張したいことは、独創性と着想を広げるには「詰め込み」が必要ということだ。詰め込みの勉強はいけないとされてきた、あの詰め込みである。

 理由は2つある。第1は、「発明」はふつう、すでにある知識や成果を組み合せて新しいものを生みだす。大発明も何が新しいかより分けていくと、ひとつひとつは、すでにあったことでできている。

 つまりは、個々のパーツを自分のものにしていないと、組みあわせようがない。組みあわせ方の着想もうかばない。

 第2は、「発見」も知識が元になる。知識がアタマに入っていないと、思いついたことや出あったことが新しいことなのかを判別できない。

 新星をみつける人は、すでにある星座の位置が完璧にアタマにはいっているので、知らないところに星があると新しいのではとピンとくる。

 プロとして仕事をするには、新しい価値を生みだす、同時に質と速さも要る。それには経験と知識をもとにした直感が要る。なければ準備が必要だ。

 いずれにせよ、コトに及んで知識をさがすのでは間にあわない。着想を練る、仮説をつくる、分析・評価する、さらにひねるなど、企画を深めるのに時間がかかる。

 では何が問題で、どうすればよいか。

 何をおいても基本的な知識の量が圧倒的に足りない。その原因は「大事なのは個々の知識ではなく考え方だ」「知識を集めて対応するのはレベルの低い方法だ」「知識先行ではアタマでっかちになる、実践が大事だ」などのあやまった思いこみで、自分の能力を適切に育ててこなかったことにある。

 これらの「」に共通する前提は「十分な基礎知識をもっている場合には」ということである。「学んで思わざれば則ち罔(くら)し、思いて学ばざれば則ち殆うし」(論語)の後半がおろそかな状態だ。

 年齢とともに仕事でも研究でも、大きく深い仕事が求められる。その段階になってしみじみとこれらに気づく。

 そのままは過ごせないので、対策を練ることになる。限られた時間で水準を上げる必要がある、忘れる速さも増している。若いときにしていなかった報いはちゃんとくる。

 速く沢山、これは詰め込みだ。

 ところで右のことはすべて自戒だ。読者に当たっていませんように。

 自分のことついでに、受けもつ学生も別の意味で事情は同じだ。専門の研究をするには知識が足りない。おまけに日進月歩で知識は生まれている。

 そう考えると修士ぐらいまでは、思いきり詰め込みをした方がよい。着想は、それをしているうちに自然にでてくる。

 なお本稿で知識とは、点としての事実と考え方の両方を含む。考え方も、知っているかどうかで勝負が決まることが多い。

 冒頭の会話は「A工房の方式をご存じならば」と、村上さんはさらに詳しく教えてくれた。こちらにとっては、10年近くまえに国際福祉機器展(HCR)で見かけた記憶が、飛び石のような知識になった。

 ことしもHCR(10月1~3日、東京・有明)の時期がきた。全体を見わたす、個々にくわしくみる。いま知らねばならないこと、すぐに効くこと、あとで役立つこと。よい機会にしたい。

日本福祉大学客員教授

後藤芳一

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