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遠望175 考える作法 講義の質「松竹梅」2014年11月27日19時19分

 「経済(成長)に偏って進んだ結果、公害や医療福祉に課題を残したのでは」「では次は環境や社会保障を集中して考えればよいのか」「『偏って追求した』のが原因なら、『環境だけ』『社会保障だけ』考えるのでは二の舞ではないか」

 大学の講義、特に高学年になると答えが出にくいあるいは一律の答えがない課題を考え、考える姿勢をまなぶ。大学で学ぶのは、本来、社会でリーダとして課題にたち向かうためだ。

 10月にはじまった大学の秋学期は、5~6週を過ぎてトップスピードに入った。昔からある「後期」の中ばだ。

 もっとも筆者の場合は、日本福祉大学(5月~12月(非常勤))、早稲田大学(8月(非常勤))、東京大学(春/秋学期(前/後期)(常勤))と年中開業なので季節感はうすい。

 ところで、季節にとらわれない(でよい)点や、社会の課題への深い経験・共感という点は、社会人に当てはまりそうだ。社会人にも、大学は大いに使える。やや強引な論法かもしれないが、読者も大学へどうぞということだ。

 そこで大きい鍵になるのは、値打ちのある講義の選びかた。それは専門的商品(サービス)を買うのと似ている。買う側の知識が限られるまま質を判断せねばならない(医療にも同じ問題がある(供給者と消費者の専門知識(情報)に偏りがあるため「情報の非対称性」といわれる))。

 ずっと需要側にいて、最近供給側に移ったという目から、筆者流の見分け方を紹介しよう。念頭におくのは大学3~4年生向けの講義。大学院ほど専門的でなく、一方、初歩でもない。いわば大学らしい専門性が表れるところだ。

 講義の質をよい順に松・竹・梅とすると、「梅」は講師が大切と考えることを整理して伝える場合だ。講演はこれでよいが講義はこれでは足りない。

 「竹」は受講者に修得してほしい内容を念頭において伝える場合。講師にとって、とか、社会にとって、ではなく、その講義として到達すべきことを設計して話すこと。

 「松」は受講者が求める水準に達したか確認まですること。聴いた分かったではなく、アウトプットで確認する。

 分かりやすくいえば、講義後に「よいレポートが書けたか」がバロメータだ。

 そこから逆算して「どの水準のレポートを書かせたいか」「それにはどのような講義が必要か」「講義中に小レポートや議論も入れるか」という順に組みたてる。

 お恥ずかしいが、筆者はこの夏漸くその域に達した。早稲田大学の「ニーズ型社会と新産業創出」という講義。3年生(一部4年生)向けで、2004年度に始めて11年目だ。

 去年までは最終レポートをみて講義の至らなさを反省し、来年はもっとうまく話そうとやってきた。

 今年変えたのは、講義中に出す小レポート(講義の終わりに10分ほどで記入)の問いを綿密に用意したこと。

 集中講義なので3日間朝から夕方まである。小レポートは各時限ごとに課したので、合計12回になった。初日はマネジメントの理論など(考える枠組)、2日目はいくつかの産業を分析(実地の分析)、3日目はニーズ型社会を考察(講義の最終目的)である。

 「マネジメントの基礎」から始めて最後は「ニーズ型社会がマネジメント理論に与える示唆」まで。講義中の小レポートは早めに目を通して好例を紹介する。優れた最終レポートは、これらを経てできる。

 こう見てくると、各界の第一線の実務家を招いて行う講義が「梅」(さらには「自分はこうして成功した」だけなら梅以下)だったり、人気講義=単位が取りやすいだけだったりするのを見抜くことができる。

 過去の受講生のことは少し気になるが、各時点で最善のことをしたとお赦し願うしかない。進化は続くので、将来ふり返って今の受講生にも同じ感覚を持ちそうだ。

 筆者が担当する科目にはゼミ方式もある。日本福祉大学で1999年度から始め、こちらはひと足先に形ができている。

 右は筆者の一例だが、教員側はそれぞれの方法で講義の質を工夫している。

 読者自身の「よい講義」を見つけ、足りない講義には叱咤する。それ自体がすでに、学びにつながっている。

日本福祉大学客員教授

後藤芳一

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