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遠望
遠望179 考える作法 どうつながる、感覚と科学2015年3月26日16時10分

 「芸術は感覚、マテリアルは科学とすると、両者はどう違う」

 「世の中のどこが感覚で、どこが科学でやるところか」

 「感覚と科学は、そもそも別々のものなのか」

 「触感や味覚などの感覚も科学で説明がつき、反対に研究や論文は、論証などは道具でやる作業であって、その着想や仮説という肝の部分は直感や感覚から来るのではないか」

 「つまり世の中は全部、科学で説明できるといえるし、逆に肝心なことは感覚ともいえる」

 「技術が進むと感覚が科学で説明できるようになる、というのは本当か、もし科学より感覚の進化が速ければ、膨張する宇宙を光で追うようなもので、追いつかぬどころか感覚の占める領域が一層大きくなるのでは」

 毎週金曜の夕方、3人の学生たちが筆者の居室にきて「ああでもない」と議論する。

 これは10月~1月に開講した「マテリアル工学自由研究」という科目の一コマだ。

 学生は2年の秋に学科に配属されるので、まず友だちをつくり、学科の全体像をつかみ、教員と触れあうのがねらいだ。

 学科で統一テーマを決め、各教員がサブテーマを決める。ことしの統一テーマは「芸術とマテリアル」、筆者が決めたサブテーマは「どうつながる、感覚と科学」だ。

 我々のグループは、2回目に目白にあるGKデザイン機構を訪ねた。プロダクトデザインの大本山だ。

 工学と芸術を考える際、中間(?)にあるデザインは思考の補助線になる。

 「デザインは工学ですか、芸術ですか」と乱暴に問うたところ、雨アラレと答えがきた。「芸術は自分が可愛い世界」の言葉が印象的だった。

 学生といると筆者が話しすぎる。彼らの話からいろいろ思いつき、つい「ということは、これも言えるのかな」と対等に議論したくなる。よって邪魔をせぬよう筆者は少し離れた自分の机にいることにした。

 それでもたまに出動する。結論に向けて議論がまとまり過ぎるときだ。話をほぐして「問い」を大きくする。何度かやると「また出てきそう」と慣れてくれる。

 ところで筆者のグループの定員は4人だった。3人しかいないので定員割れ、しかも第一志望は1人だけだった(残りはジャンケンで負けて来た)由。まわりの声では、サブテーマが抽象的で取っつきにくそうだったのではとのこと。

 たしかに他は黄金比、モナリザ、高感度センサー、3Dプリンター、日本刀など具体的だ。

 そう聞くとさらに強調したくなる。「具体例を扱うには一歩抽象化した評価軸を持つ必要がある、我々はそれを考える」「具体例は自分で選べばよい、それを選ぶ権利を持っているのはむしろ、贅沢なこと」

 彼らが卒論研究の研究室を選ぶのは1年後の3月。今回の経験をどう受けとめ、その後の専門教科の学習を通じてどう考えるか。1年後に我々の流儀に関心を持つだろうか。

 自由研究を担当したのは今度で2回目なので、最初に受けもった学生たちがこの3月に研究室を選ぶ。そこで1回目の答えがでる。

 ただ、それも「答え」なのかは分からない。10年か20年経ってからそういえばと感じてくれるのもよいかも知れない。

 2000年頃に政府系機関に出向して、ある分野をゼロから創った。根本の部分の検討に注力したので周りは分かりにくかったかも知れない。当時の若い同僚が今年の賀状で「あの頃に学んだことの意味をようやく理解、応用できてきた気がします」と書いてくれた。こういう効き方だ。

 経営の実務では結果をみてすぐ修正(フィードバック)。これは機械やモノには便利でお手軽な方法であり、それを器用にできるのが有能とされてきた。

 ただ、高度な仕事はそれでは歯が立たない。フィードバックやPDCAは、やることが決まっている場合の現場的管理手順だ。仕事が高度になると、やる事をどう決めるかが勝負になる。

 高度な競争社会では課題を深く掘って対応できる人が求められる。感覚と科学を半年考えたこと、大きく活かしてほしい。

【訂正】先月の本欄で「クズネッツも似た結果」と書きましたが、正しくは「クズネッツも似た分析をしたが結果は反対」でした。お詫びして訂正します。

日本福祉大学客員教授

後藤芳一

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