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遠望
遠望181 行動の技法 年度替わり豹変策2015年8月20日16時08分

 ある年の年度末、卒業式を終えた学生(中野くん(仮名))がやってきた。中野くんは卒業してコンサルティング会社に就職が決まっていた。

 あらたまって話があるわけでもなく、卒業しました、おめでとうといったほどのことだった。

 そういえば、中野くんとはよく話しをした。中野くんは、コーヒーに入れたミルクを、ちゃんとスプーンでかきまぜる。

 中野くんも筆者も、ともに話しが好きだったせいもあるが、折々によくこうして話しをした。

 学生会の会長を務める中野くんは、広い人のネットワークと才気があり、社会への関心も旺盛だった。卒業研究をしながら事業に関心をもち、途中で起業したいと言いだした。

 結果的には、1年間休学したあとで復学し、この日、1年遅れで卒業を迎えた。(復学するときに同君は「先生は『アタマを冷やしたら、また戻ってくるヤロ』と言っていましたね」と笑った。よく覚えていないが、内容自体はうなづけるので、言ったらしい)

 ところでこの中野くん、年明けから入社まで、何度か研修があり、折々に会社に行った。その際、仕事のすすめ方などで目についたことを、いろいろ指摘した。

 それで早くも社内で赤ランプが点いた。ヘンなのが来た、というわけだ。「上司の指示には従うこと」と念書を書かされた。(こういう情報は、秘書さんたちが詳しい。学生の部屋と筆者の部屋に1人ずついて情報を共有し「入社する前に、やっちゃったらしいです」などと教えてくれる)

 それを念頭に水を向けると、本人が事情を話してくれた。確かに、いつもより元気がない。

 そこで「4月1日から豹変しては」と助言した。入社した日から別人格になる。大人しくして、自分の守備範囲に集中する。これは何も特別なことをするわけではない、新入社員として普通にしているだけだ。

 ただ、まわりは以前の中野くんを知っているので驚くかもしれない。あの元気はどうした、とか言ってくる。そこで表情を変えずに、元々ボクはこういう感じです。あれは入社前の外の立場なので申しただけですと答える。

 入社前をXモードとすると、入社後大人しいのはYモード。Yモードを好む会社なら、そのまま過ごせばよい。ただ、そういう会社はこれからは生きのこれない。

 それが分かるので、経営トップは従来にとらわれない発想を、とゲキをとばす。周りの上司を含めて状況が整うのなら、少しずつXモードを再開する。

 Yモードだけのひとより引き出しが多い、TPOで使い分けられる、最初の期待値を下げてあることがサプライズを生む。こうしていつの間にか、問題児がエースに化ける。その起点が4月1日というわけだ。

 まずいなと思いつつ、路線を変えられないことがある。たまにあるのは、周りの助言で目が覚めて路線を変える方法。ただ、この方法は自分をよく知ってくれている人が、しかも、絶妙のタイミングで言ってくれなければできない。他人だのみ、運だのみという意味で他力本願だ。

 それに比べると「4月1日豹変」策は、自分の意思でできる。

 新年度は誰にも平等にくる、3月までの成績や業績はご破算だ。好調だった人は途切れて残念かもしれない。ただ、もともと実力があるか、仕事の水があっての結果なので、ふつうに続ければよい。

 問題は調子のよくなかったひと。しかも、原因が自分自身にあり、それに気づいて路線を変えたいと思っているひと。豹変策が効くのはそういうひとだ。

 他の分野にも似た例がある。野球で5回が終わって行われるグランド整備(通常のチェンジより時間が長い)。

 特に高校野球。5回まで0対6で負けている。ここで監督はマジックをかける。「ここからは、別の試合。先取点を取ろう」実際、5回の前後で試合の流れが劇的に変わることがときどきある。

 4月1日は過ぎたばかり、確かにそうだ。でも節目は1月1日、10月1日もある。お盆もあれば梅雨明けもある。近くにもよいのがある、月末の大型連休だ。いつでもよいわけだ。明日からでもよい。

 で、中野くんは結局どうなったか。それは、またこんど。

日本福祉大学客員教授

後藤芳一

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