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遠望
遠望183(最終回) 考える作法 愛情生みだす側に2015年8月20日16時44分

 いつの間にか木々は深い緑。

 新年度の仕事や学びはすでにトップスピードだ。よいペースで、充実した1年にしたい。

 目の前の課題に向きあうことが、まず絶対に必要だ。これをXとしよう。

 ただし、今年もしのいだ、それを続けた、というだけではもの足りない。5年続けたことと10年続けたこととの違いがあってよい。積み上げていくこと。繰り返しているようでも中身が改善し、経験が体系化されていく。これがYだ。

 XとYをくらべると、繰り返して続けるところは同じだが、改善しながら繰り返す、何を達成しよう、そのためにどの方向へ行こうと構想をもちながらするのがYだ。

 XとYがあればZもありそうだ。Xに対して「だがら何、それでいいの」と問うとYになる。Yにも同じように問うとZがみえてくる。

 Zは外から恵みを受けていること。

 XやYは自分自身のことであるが、Zは他者や周囲との関係だ。自分が仕事や暮らしをつつがなくできるのは、経済や社会といった環境があってのことであり、近くで遠くで気にかけてくれる人がいてのことだ。

 恵みは誰かがどこかで生みだしている。収支を考えると、自分もどこかでお返しする必要がある。

 ただ、直接に返せないことも多い。相手が遠くにいる、生みだしたのが誰か分からない、生みだされたのは昔だった、複合的に生まれた、生みだしたのは人ではなかったなど。

 でもとに角、受けているだけでは辻つまが合わない。収支が合わないだけでなく、ツキの神様にも見はなされる。何とかせねばならない。

 ここで、その方法を考えよう。恵みの行きわたり方は熱の伝わり方に似ているのではないか。そうだとすると、伝熱工学のモデルが便利だ。

 まず、直接に熱を伝えるのが熱伝導だ。ハンバーグを焼くと、フライパンに接したハンバーグの底が温もり、その熱が中を通ってハンバーグ全体を熱くする。

 目の前にいる人を支えるときや、対象とすべき相手がはっきりしているときはこの方法だ。直接なので相手に合わせて応援でき、効果も大きい。

 もう少し広くやるときは対流だ。空気や液体など(媒体)を温め、それが冷たいところに移動して熱を運び全体が温かくなる。スープを温めるのがこれだ。

 これは間接の方法であり、中身も公約数になるので効き目はゆるくなるが、広く大きくできる。国の制度や社会的企業は、人や資金を通じて社会を動かす。

 XやYに取り組めたのは、誰かが生みだした恵みがこうして行きわたり、自分のところにも届いたからだ。

 恵み、環境、応援、支える、制度、人、資金、温かさ。いろいろ姿を変えてでてくるが、要は愛情だ。制度などの無機的なものも元は人がかかわっている。

 愛情とはどのようなものであろうか。好き、好感、気にかけている、何となく気にかけている、と、濃いものから淡いものまである。

 では、淡ければ弱いのか。淡さのずっと先を考えると、特定の誰かに向けて行うものではなくなる。相手という存在は消える。自動詞のような形で愛情を送りだす。受け取るのは草木や空間かも知れない。

 いるだけで、ぽかぽかが周囲へ伝わる。ゆるい熱線がでている。

 伝熱のモデルでいえば輻射(ふくしゃ)だ。太陽と地球の間は真空なので媒体(空気)がないが、熱線がとどく。バーベキューをする時、陰では涼しいが、火が見える場所は熱いのはこれだ。

 太陽のような存在になれれば(それほど偉大でなくてよいので)、遠くまで温かさを届けられる。

 淡くなるほど普遍的になり、ながく続く。相手に頼らなくて済む分、その影響を受けない。

 さらに進めると、自分の意識もなくなる。誰かに、でもなく、よいことを、でもない。無意識。自分自身の影響をも避けられる。

 熱線が運ぶのは思い、言葉、理念、思想、あるいはここでもまた無意識か。

 ふり返ると筆者は、社会や組織、家族や同志から愛情を受けることばかり多かった。このままでは辻つまが合わない。

 時間切れになるとまずい。これからは、お返しする側にまわろう。

 連載は今回まで。長くのお支えにお礼を申し上げます。(了)

日本福祉大学客員教授

後藤芳一

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